従業員への事業承継
多くの経営者が従業員への承継を考える
従業員に会社を継がせたいと希望する経営者様は少なくありません。
実際、弊社にご相談いただく経営者様の中にも、まずは、従業員への承継を検討したい、または、既に検討したという方が、かなりの割合でいらっしゃいます。
会社の後継者としては、中小企業経営の苦労を共にし、自社のビジネスや企業文化を熟知している従業員は、たしかに理想的です。
しかし、従業員への事業承継を実現するには、いくつかのハードルがあります。
従業員への事業承継のハードル
① 経営能力をもつ人材がいない
従業員として優秀な人材が、経営者として十分な能力を持っているとは限りません。特に、中小企業の経営者には、トップ営業、労務問題、対銀行折衝、同業他社・業界団体との付き合い等、現場の責任者とは比べものにならない、広範な事項への対応力が要求されます。そのような能力を持つ従業員は、それほど多くないのが現実です。
② 経営者になりたい従業員がいない
人によって人生観は様々です。「重責を担いたくない」、「いまの職責で満足している」、「出世したくない」、「仕事だけの人生は嫌だ」等、経営者になりたがらない従業員は少なくありません。
③ 借入金の連帯保証・担保を引き継げない
多くの中小企業では、会社の借入金を経営者個人が連帯保証しています。従業員への事業承継に際しては、この連帯保証の引継が問題となります。経営者になることを望む従業員がいたとしても、多額の借入金の個人保証には難色を示す可能性があります。逆に、銀行の側が、個人資産の乏しい従業員の連帯保証では不十分と考える可能性もあります。
その場合、元の経営者が、第一線を退いた後も、個人保証や個人財産の担保提供を継続することになってしまいます。
④ 株式を買い取る資金力がない
経営者様が保有する株式を全て買い取ることができるほどの資金力がある従業員はほとんどいません。所有と経営を分離し、経営者様が株式保有を継続し、従業員には経営だけを任せるという方法もありますが、これでは経営者様に本当の意味での引退による安息は訪れません。オーナーとして、どうしても会社のことが気にかかってしまうはずです。
また、会社を引き継いだ従業員も、オーナーに対して気を使わなければならず、自由で迅速な意思決定ができないこともあります。
さらに、株式が売却できなければ、創業者利益を獲得することができないばかりか、最終的には相続の局面になって、相続人と会社を引き継いだ従業員の間での紛争の原因になりかねません。
従業員への事業承継の実践
上記のとおり、従業員の事業承継にはいくつかのハードルがありますが、不可能ではありません。実際に、弊社でお手伝いさせていただいた成功事例もあります。
以下の条件が満たされれば、従業員への事業承継の可能性があります。
- ① 経営能力と経営意欲がある従業員が存在する。
- ② 会社が実質的に無借金で、連帯保証・担保の問題がない。
- ③ 経営者様が多額の創業者利益を望んでいない
このような場合は、会社が銀行借入を行い、その資金を株式の買い取り資金として従業員に貸し付けるというスキームで、経営者から従業員への株式譲渡を実行することが可能となります。
ただし、このスキームでは、他社に会社売却する場合より売却価格が低く抑えられるため、創業者利益は小さくなる傾向にあります。
また、会社や従業員に借入金が残るという問題もあります。
従業員への承継以外の選択肢
以上、従業員への事業承継の実情をお話しました。
従業員への事業承継は、条件さえ整えば不可能ではないこと、ただし容易ではなく、デメリットもあることを、お分かりいただけたと思います。
この点、他社への会社売却という方法は、良い相手先が見つかれば、従業員への承継の際に生じる様々な問題をクリアにできるだけではなく、会社の安定性や成長性が高まり、結果的に会社に残る従業員にとっても良い結果をもたらすことができます。
従業員への事業承継を検討中の経営者様には、従業員への事業承継のメリットとデメリットを十分考慮した上で、他社に会社を売却するM&Aという手法を、選択肢の一つに加えていただければと思います。
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