株式会社MS. BUNNY
現場好き、職人気質だけでは会社の運営は継続できない
譲渡企業 | 譲受企業 |
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㈱MS. BUNNY | GAUDI㈱ |
東京都 | 神奈川県 |
動物カフェ | 遊技場運営・飲食店運営 |
スキーム 株式譲渡 |
動物と触れ合うことのできる飲食店「動物カフェ」を運営してきたのが、株式会社MS. BUNNY/株式会社HARRYの元社長・平野有起さん(32歳)と元会長・阿部徹哉さん(47歳)です。会社設立からわずか5年にして、ビジネスは2人の経営者の手が届かいないところまで急成長を遂げ、将来の運営について悩むようになったことから、M&Aによる会社の譲渡を決断したと言います。創業の経緯、打診から譲渡に至るまでの紆余曲折を両者に聞きました。
飲食店+ペットショップ=動物カフェというアイデア
2015年に会社を設立し、「ハリネズミカフェ®」というユニークなビジネスを展開されてきました。創業のきっかけ何だったのですか。
阿部 2011年にうさぎの専門店(動物カフェ)をオープンして、下地づくりを4年ぐらいやってきました。そこで自信がついたので会社にしたという形です。会社にした理由は、私たちがやっている動物カフェがビジネスとして成り立つことを世の中に伝えたいという思いがあったからです。
うさぎからスタートして、かわうそ、ハリネズミ、ミーアキャットなども取り扱っていますが、やはりそうした動物が好きだったからですか。
阿部 何でもそうですが、「好き」からアイデアが生まれてくることって、たくさんあると思います。もともとはペットショップを考えていましたが、ペットショップ的な機能を果たしながら、カフェが持つカジュアル感を融合させたい。そのほうが発展性もあると思い、現在の形にたどり着きました。店舗は、飲食店として動物と触れ合うことができるだけでなく、生体の販売も行っています。
ビジネスは順調でしたか。
平野 最近はかなり認知されていると思いますが、私たちが始めた当初は動物カフェというのがほとんどなくて、「それって何?」という反応も多かったです。うさぎカフェをやっていましたから、「この子たちコース料理になるんですか?」と聞かれたこともありました(笑)。
間違ってお店に入ってくるお客さんもたくさんいて、それはそれで楽しかったのですが、ハリネズミさんを扱うようになってからは、お店としても会社としての知名度もどんどん上がっていって、本当にすごいなと思いました。
改めて、貴社が運営する動物カフェの特徴や強みはどこにありますか。
平野 普通のペットショップですと、見ているだけだったり、あるいは店員さんが「抱っこしますか?」と聞いてきて、気に入ったわんちゃんを抱っこして、そのまま何となく連れて帰るという流れだと思いますが、うちは動物カフェという入口で来ていただいたお客様にしっかりお金をお支払いいただいて、自分の好きな子をゆっくり触って、一番相性がいい子をお迎えできるというシステムをつくったので、そこはペットショップとしては新しいのかなと思います。
ハリネズミカフェ®を始めてから、競合も増えてきたと思いますが、こうした動物の販売に関するシステムは、うちだけのノウハウですので、他社が簡単に真似できるものではないと自負しています。
どんなお客様がいらっしゃいますか。
阿部 若い女性グループやカップルが中心ですが、意外と一人でいらっしゃる男性のお客様も多いです。六本木のお店には、IT企業にお勤めのシステムエンジニアの方がいらっしゃったことがあります。仕事でものすごくストレスをため込んでいて、どこで気分をリセットすればいいのかわからず、たまたま昼休みにお店の女の子からチラシを受け取って、入ってきたのが最初でした。カフェをご利用いただいただけでなく、ついにはハリネズミさんを買っていただいて、そこから輪が広がっていきました。というのも、餌を買いにきたり、報告をしにきたりするなかで、他のお客様と交流が生まれ、お客様同士が仲良くなるケースも多いからです。男性のお客様はとてもうれしそうでしたし、私たちもうれしかったです。
想像以上の急成長に管理体制の整備が追いつかず
創業から5年で東京・横浜に5店舗を出店し、従業員はアルバイトも含めて50人を超えるまでに成長しました。にもかかわらず、なぜ今回、会社の譲渡を決断したのですか。
平野 会社が大きくなってくると、求められるスキルもいろいろ増えてきます。社長と会長の2人だけではどうすることもできないところが出てきて、将来の運営について悩むようになったのがきっかけです。もともと現場が好きで始めたビジネスでしたが、店舗数が増えてくると、現場を見るだけでは済まなくなってきて、2人だとだんだん手が回らなくなっていきました。
阿部 現場スタッフの声がなかなかダイレクトに聞けなくなってきたことが、大きな要因です。出店すればするほど、お店も大きくなって、人材教育の重要性も高まってきます。一方で、スタッフの本音が右から左に流れてしまうことも多くなり、現場とのコミュニケーションが難しくなっていきました。そうしたことが会社の譲渡を考えるきっかけになったかなと思います。繰り返しになりますが、現場が好きで、現場重視で仕事をやってきたのですが、私たちの想像以上にビジネスが急成長し、管理体制の整備が追いつかなくなったというのが正直なところです。
事業承継の手法としてM&Aを選択されましたが、M&Aについては、誰かからアドバイスをもらったり、お二人で調べたりしたのですか?
平野 うさぎカフェの前に、二人でお花屋さんを開いていたこともありますが、私たちにあるのは「現場が好き」とか、職人気質だけです。経営者としての能力が不十分なことはわかっていましたから、どこかで限界を感じたときに、自分たちより優秀な人を迎え入れるのもありかなと、何となく考えていました。
本を読んだり、インターネットで調べたりしている中で、出会ったのがインテグループさんだったというわけです。まずは、M&Aがどんな感じなのか話を聞いてみようと思い、ホームページから問い合わせしました。
インテグループ以外にも相談しましたか。
平野 最初にインテグループさんにお話を投げて、そのままです。最初の面談で丁寧にいろんなことを教えていただいて、私たちの希望をかなえてくださると感じたので、直感を信じてインテグループさんに決めました。
阿部 知り合いからは、いろいろな専門家に声をかけて、できるだけ金額をつり上げたほうがいいよとアドバイスももらったのですが、金額のことよりも自分たちの希望をかなえてもらったほうが、納得感があると思ったので、平野社長を信じて、インテグループさんに任せることにしました。
最初の買い手候補とは交渉が決裂し、仕切り直しに
4社から意向表明書(条件提示)をもらい、そのうち1社の投資会社と独占交渉を進めましたが、交渉は決裂してしまったそうですね。
平野 金額や引き継ぎ期間などの条件面で折り合いがつかず、まとまりませんでした。でも、無理して譲渡する必要はないという考えもあったので、あまり妥協してやるのも意味がないかなと。ダメにはなりましたが、仕方がないと思っていました。その後、譲渡条件の見直しを行い、新規の買い手候補に打診して2社から意向表明書をもらったときには、正直ほっとしましたが……。
複数の買い手候補の中から、GAUDI社を選んだ理由は。
平野 複数の会社の方と面談し、お話をさせていただきましたが、GAUDIの社長さんのお話を聞いたときに、目線が現場目線といいますか、現場の気持ちがよくわかっていらっしゃる方だという印象を持ったので、それが大きかったです。
GAUDIさんは神奈川県を中心に遊技場や飲食店、スポーツフィットネスジムなどのエンターテインメント事業を手掛けていたので、ハリネズミカフェ®のコンセプトと融合しやすいと思ったことも理由の1つです。
譲渡の交渉を進める一方で、従業員の方にもどこかのタイミングで伝えないといけません。実際にどんな話をされて、従業員の反応はどうでしたか。
阿部 1年前ぐらいから、もしかすると社長が変わるかもしれないということを伝えていました。スタッフは家族みたいなものですから、裏切られたという感じは持ってもらいたくないですし、仕事に対する情熱も失ってもらいたくありませんから、気を使いました。スタッフが不安に思っていたのは、会社はこれからどう成長するのか、ビジネススタイルはどう変わっていくのかということに加え、待遇面です。これらについてはしっかり話し合ってきました。
「何で会社を譲渡しなきゃいけないんだ」というスタッフが何人かいたのも事実です。それについては、譲渡するだけでなく、会社の成長戦略として次に「ハリー」(ハリネズミカフェ®)がどこに向かうのかということを説明しました。買い手企業がグループ会社でネットカフェを経営しているので、フランチャイズなどを通じて、積極的な出店計画も可能です。スタッフ自身が情熱を持てば、明るい未来が待っているんじゃないかということを訴えてきて、みなさんには納得していただいたと思います。
2019年12月末に株式譲渡が完了しました。それから1カ月弱ですが、実際に譲渡してみての感想はいかがですか。
平野 まだ引き継ぎもさせていただいているので、譲渡したという実感はあまりありません。引き継ぎが終わったら気持ち的にも、余裕が出てくるのでしょうか。スタッフもやる気を出して頑張ってくれていますし、新しい社長さんもけっこう現場に入って、コミュニケーションをとっていただいているので、よかったなと思います。
会社の譲渡には寂しさもあるが、新たな発展に期待
「小さく生んで大きく育てる」ではありませんが、お2人で苦労して会社を立ち上げ、大成功したビジネスを手放す形になりますが、それについてはいかがですか。
阿部 正直寂しい思いはあります。ただそれは、ある意味ビジネスというか、ある程度、自分が納得したうえで、リレーのバトンタッチができれば、また違った形で発展の余地が生まれるのかなと、自分に言い聞かせながら、M&Aの手続きを進めてきたところもあります。
お2人はまだまだお若いですから、当然、これでリタイアされるわけではなく、この先も何か新しいビジネスを計画されたりしているのですか。
阿部 今のところはまだアイデアはないのですが、自分の中で何か燃えるものが出てきたら、またその時に行動に移すことができればいいなと考えています。ただ、目先は少しリフレッシュ期間を取って、身体を休めて、頭の中を空っぽにしたいと思います。この5年間で燃え尽きてしまった感じがありますから(笑)。しいて言うと、自分はずっとモノ売りが好きなものですから、まったく違うビジネスというよりは、モノ売りの周辺でいろいろ考えていきたいなと思います。
担当の加瀬さんの対応を含め、インテグループに依頼してよかったですか。
阿部 私たちのような小さい会社でも、足を運んでもらい、親身になって相談を受けてくださいました。担当していただいた加瀬さんについては、うちの社長から次々と出てくる細かい要求、要望についてもすべて対応し、なおかつ当社だけに肩入れをするのではなく、バランスを取りながら先方と交渉に当たってくださったことは本当に感謝しています。ビジネスの世界では、どうしても損得で判断することが多いと思いますが、私たちの動物たちに対する熱意もGAUDIさんに伝えていただいて、加瀬さんで本当に良かったです。
さまざまな理由から会社の譲渡を検討するオーナー社長が増えていますが、そうした方々にメッセージ、アドバイスを最後にいただけますか。
阿部 最初はM&Aに対してネガティブなイメージを持っていましたが、交渉の過程で、加瀬さんとお話させていただく中で、いろんなアドバイスをしていただいて、そこからは不安はなくなりました。引き継ぎも思っている以上にスムーズに進んでいます。
ペットショップや動物カフェといったビジネスに対して、世間の評価はまだまだ低いと思われますが、今回、インテグループさんのご支援によって、M&Aが成立したことによって、「ペットショップを買うなんてリスクが高い」というところから価値観が一変することを期待しています。ペットショップを経営されている社長さんもM&Aを検討する余地が大いにあるとお伝えしたいです。
平野 あとから知ったのですが(笑)、インテグループさんは完全成功報酬制の仲介会社なので、安心して相談できると思います。