株式会社エブリー
事業の安定成長のためM&Aによる売却を選択 中堅同業企業の傘下で安定成長を目指す
譲渡企業 | 譲受企業 |
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㈱エブリー | ㈱元気な介護 |
大阪府 | 北海道 |
介護(サ高住等) | 介護 |
スキーム 株式譲渡 |
介護事業の関連制度や法規が移り変わる中、「安定した事業運営のためには、大手と組んで規模を拡大することだ」との判断から、事業売却を決断した株式会社エブリー前代表取締役の宇崎勝さん。
その経緯とM&Aにおけるポイントなどを伺いました。
介護保険制度施行とともに、介護業界に参入
創業のころのお話をお聞かせください。
私は元々会社勤めで、営業をしていたのですが、40歳のときに退職・独立して、ダスキンのフランチャイズチェーンに加盟したんです。ダスキンは当時からいろいろな事業を展開していて、私は一般家庭や会社、病院などを回る「ハウスクリーニング事業」を始めました。
2000年に介護保険制度が始まることになったとき、介護について、本を読んだりして勉強しました。すると、ダスキン事業よりも介護事業のほうが、遥かに効率が良かったんです。それで、介護保険制度が施行されてすぐに、ダスキンと並行して介護事業を始めました。
もちろん未経験の世界ですから、無我夢中で手探りでしたね。訪問介護から始めて、福祉器具のレンタル、デイサービス…。介護タクシーもやったことがありましたが、リスクが高く効率が悪い上に、収益も上げにくかったので、すぐにやめてしまいました。
ものにならなかった事業もあり、ダスキンでの収益を介護事業に注ぎ込むという状態ではありましたが、全般的には上り調子で、「これはいける」という確信は持っていました。
ダスキンから介護事業への切換えは、どの時点で決断されたのでしょうか?
当時のダスキン事業は安定していましたし、介護事業も少しずつですが拡大できていました。
ですが、デイサービスを始めたときに、「これは忙しい仕事だな」と感じたんです。このまま介護事業を拡大していくなら、ダスキンとの二足のわらじではやっていけない。とはいえ、当時はダスキン事業を任せられる人材もいませんでしたから、本部に掛け合って、お客様とスタッフをセットで事業譲渡しました。
もっとも、譲渡額は小さく、本当に安く売り渡してしまいました。当時はまだM&Aという言葉自体が知られていませんでしたし、信頼できる仲介業者もいませんでした。コンサルティング会社が顧客の相談を受けて仲介するというケースが、多かったのではないでしょうか。
ですから、私のように事業を安売りしてしまった例は、多々あったと思います。今は、売り手と買い手の双方を公平に判定してM&Aを進めてくれる専門の会社がありますから、安心感は強いですね。
「年商3億円以上」が安定運営のために必要な規模
そもそも、エブリーさんがM&Aに踏み切った理由は何でしょう?
最初に考えていたのは、次世代への事業承継だったんです。
2000年から介護事業を始めて十数年、成功も失敗も経験しながら、それなりの規模にまで育ててきた。事業としても安定していますから、そろそろ子供の世代に手渡す時期だと考えていたのです。
ところが、ここ数年の介護保険制度や関連法規の改正といった行政の動きを見ると、事業者にとってどんどんきびしい方向へとシフトしています。
例えば、介護支援事業ではどんなスタッフを何人配置しているかによって、行政から特定事業所加算が出ます。加算は1~3の3つの区分があり、最も高いのが区分1になります。
もちろん、事業者側としては区分1を取りたいのですが、それには、常勤の主任介護支援専門員を2人以上、さらに介護支援専門員を3人以上置かなくてはならない。区分2の場合は主任介護支援専門員が1人以上に、介護支援専門員が3人以上。一番下の区分3では、主任介護支援専門員が1人以上、介護支援専門員が2人以上必要です。
それだけの人員を用意するとなると、当然ながら人件費がかさむ。ということは、事業規模を大きくしていかないと、運営がままならなくなってしまうのです。
「この状況で次世代に事業承継していいのか」「大資本と組むなり、売却するなりしたほうがいいのでは」などと考えるようになり、M&Aという選択肢が浮かび上がってきました。
具体的にどれほどの事業規模が必要だとお考えですか?
およそのラインですが、年商で3億円以上の規模は必要だと思います。行政は大規模な事業者に集約しようとしていますから、将来的に介護事業を続けるためには、規模をどんどん大きくしていく必要があります。
ただ、拡大するにも限界があります。介護事業は行政による縛りが強いですし、規模が大きくなれば規制もきびしくなっていきます。事業効率が良く、しかも利用者にメリットのあるプランを作ろうとしても、規制によってそれができないということも増えていくでしょう。
そして、人材の問題もあります。介護サービスは建物ではなく人手で成り立つ事業ですから、規模の拡大やサービスの充実のためには、それだけの人材が必要です。行政からの加算を受けるためにも、一定数以上のスタッフ、有資格者が欠かせません。それなのに、スタッフを募集してもなかなか集まらない。退職者や転職者が出てしまうと、すぐに補充ができないために、必要なサービスを提供できなかったり、加算が削られてしまったりというリスクもあります。
今後の介護事業は、真面目にやっている中小事業者が、ますますきびしい運営を強いられるようになるでしょう。慢性的な人手不足で賃金を上げていかないと人が集まらない。一方で、行政からは「労働時間を抑えろ」「有給を増やせ」などと注文がつく。
外食業界や運送業界なども同じだと思いますが、介護事業も値上げができません。ですから、余裕のある資本のもとで、ある程度以上の規模がないと、事業者が負うリスクばかりが増えていくことになるでしょう。
頼りになるベテランが辞めずに残ってくれるかが重要
M&Aを進めていく過程で、社内での問題や動揺、不安はありませんでしたか?
特に大きな問題はありませんでしたね。社員には私たちの現状と今後の見通しを説明した上で、「無理に拡大していくよりも、大資本に預ければ運営が安定するし、そのほうが安心だ」と話しましたので。
ただ、経営者が変わることで、自分たちの処遇がどうなるのかという不安は見られました。それは当然のことですから、文書で約束を取り交わすので心配ないということを、しっかり伝えました。
現場をよく知っているベテランが、辞めずに残ってくれたのも幸いでしたね。頼りにできるメンバーがいなくなってしまうと、それにつられるように辞めていく人も出てきます。人ありきの介護事業で人がいなくなることは致命的ですから、一番重要なポイントだと思います。
M&Aからすでに1年が経ちます。すべて終わって、どのようなお気持ちですか?
長年やってきた仕事ですから、寂しさはあります。でも、隠居して遊んでいるつもりはありません。頭も体も、使っていかないと衰えるばかりでしょうから、介護事業のコンサルタントやM&Aのお手伝いなどができれば、私自身の経験を活かせるでしょう。
これからは、介護業界でのM&Aがますます増えていくと思いますが、私が伝えたいのは、まずは信頼できる仲介業者に任せるということでしょうね。売る側と買う側、双方の利益を最大にするには、経営者同士で話し合っていてもうまくいきません。インテグループさんのような、専門の会社さんにお願いすることが大事だと思います。
オーバートークにのらず、誠実さと信頼感で選ぶ
M&Aを仲介する会社はいくつかありますが、その中からインテグループをお選びいただいたのは、どのような決め手があったからでしょうか?
誠実さと信頼感です。M&Aを検討し始めたとき、実はインテグループさん以外にも何社か声をかけたんです。すると、ある会社は「御社に興味を示している会社がこれだけあります」と、すぐにリストを持ってきた。まだ私たちの内情をひとつも伝えていないのに、そんなリストが作れるはずがありませんよね。別の会社は料金設定がやたらと細かくて、M&Aが不成立になっても結構な料金を取られるようなしくみになっていた。
話をしてみても、実態からかけ離れたセールストークが多くて…。私自身が営業畑を歩いてきましたから、オーバートークはすぐにわかるんですよ。だから誠実さを感じられず、信頼できない。
ところが、インテグループさんは完全成功報酬制で安心だし、お話ししてみると業界のこともよく理解されている。実は、藤井社長の著書を拝見したのですが、そのとき「ここならお任せできる」と思ったんです。提示された売却額も納得のいくものでしたし。
当社は完全成功報酬制ゆえに、適正な相場感覚で売却価格を提示しています。ですが、それ以上の額を提示する会社さんがあれば、残念ではありますが、売り手さんとしてはそちらになびいてしまうこともあります。
でも、その額に根拠がなければ意味がありません。そうしたオーバートークにのせられてしまうのが一番怖いですね。
M&Aを考えるのであれば、どこの仲介会社さんにお願いするかを慎重に見極めるべきだと思います。半年も1年もかけてM&Aをやったところで、業者さん選びに失敗してしまったら何にもなりません。その見極めは簡単ではありませんが、一番大事なところです。まずは「営業マンの調子の良すぎるトークには警戒せよ」というところでしょう。
もしも、インテグループさんが大阪でM&A説明会などをやる機会があったら、ぜひ私を呼んでいただきたいですね。仲介会社選びがどれほど大事か、きっちりご説明させていただきますよ。体験者の声が、一番参考になりますから(笑)。