株式会社セールスサポート
マーケティング支援会社の創業社長が“業績好調”の子会社を譲渡した理由
譲渡企業 | 譲受企業 |
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㈱セールスサポート | ㈱ディ・ポップスグループ |
東京都 | 東京都 |
マーケティング支援 | IT・通信 |
スキーム 株式譲渡 |
2000年創業の株式会社ネオマーケティング(本社・東京都渋谷区、東証スタンダード市場上場)は、メーカーを中心とした企業のマーケティング支援を展開している会社です。リサーチ事業を軸に、総合マーケティング支援企業として、生活者起点(=消費者目線)の様々なマーケティング支援を一気通貫で提供しています。創業者である橋本光伸社長は、2015年に全株式を取得した連結子会社である株式会社セールスサポート(本社・東京都渋谷区)の全株式を譲渡しました。子会社譲渡を決断した背景について橋本社長にお伺いしました。
商品開発時点からのマーケティング支援にこだわり
ネオマーケティングの成り立ちについて教えてください。
私は1999年に大学を卒業して広告代理店に入社し、新聞や雑誌、テレビなどの広告枠をスポンサーさんに販売する仕事をしていました。そのときに「マーケティングリサーチ」の手法に出会いました。
簡単にいうと、たとえば、テレビ番組のスポンサーになってもらうために、視聴者の属性や趣味や嗜好、世帯年収などのデータを集めて「御社のブランド商品と視聴者層が適合するので広告を出してください」という営業をする。全国紙やテレビ局のキー局のような大きな広告枠を販売する仕事もあって、それがすごく楽しかったんです。
ただ、仕事を続けていくうちに、もっと品質が高く、クライアントさんに最適なものをご提案できる会社を作りたいと思うようになり、ネオマーケティングを設立しました。
ネオマーケティングでは、どのようなことを大切にしていますか?
クライアントさんの先に「一般の生活者」がいることを大事にしています。主語を生活者(=消費者)として「生活者起点のマーケティング支援」と名付けています。
私たちの会社はものを作っているわけではありません。当社のクライアントさんを通じて、クライアントさんの商品・サービスが生活者に提供されていきます。だからこそ、まずは生活者について深い理解を得ることを大切にしています。
マーケティングで得意とする分野は?
食品、飲料、家電製品、化粧品など、スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストア、家電量販店などで並んでいる商品のメーカーが取引先に多いですね。
マーケティング情報を集めて分析し、プロモーション方法、広告媒体への出稿、商品のパッケージ案など、商品開発の時点からマーケティング支援に入ることを得意としています。またそれが、私たちがこだわっているところでもあります。
企業情報収集ツールのサブスクで安定収益
セールスサポートは、2015年にネオマーケティングが買収した会社でした。どのような会社なのでしょうか?
セールスサポートは、主に法人向けの企業情報収集ツールであるソフトウェア「Urizo」を販売しています。費用は毎月支払いのサブスクリプションモデルで、4つのプランから選べるようになっています。
ソフトウェアの仕組みはシンプルで、「iタウンページ」や「ハローワーク」などのウェブサイトから、企業情報をリアルタイムに自動収集します。
「Urizo」の強みは、Google Mapなどの情報をリアルタイムで反映するプログラムが入っていて、最新の情報が素早く反映されることです。他社にも企業情報を集める同様のソフトウェアがありますが、ここまで最新情報に強いソフトウェアは他社にはないと自負しています。実際に、業界内でも高いブランド力を持っていました。
また、「Urizo」は、地域や業種に限定して企業情報をリスト化できる機能があります。たとえば、特定の地域の美容室だけをリストアップして営業活動をしたいときなどに、とても有効なツールです。企業リストを作成する場合、コストとして1件あたり5円かかるのが相場ですが、「Urizo」の場合は1円以下です。
セールスサポートの業績は毎年好調だったそうですね。
一定数のサブスクリプションの契約が常にあるので、毎年安定した収益がありました。買収したときの投資分はすでに回収していて、あとは収益を生むだけの状態でした。
とてもユニークだったのが、毎月数百社のサブスクリプションの契約数が、大きく変動しないことです。なぜかというと、「Urizo」を購入してパソコンにインストールすると、必要な企業リストはすぐに収集できてしまいます。そのため、一定期間を過ぎて必要な情報が集まれば、解約する企業はたくさんあります。
しかし、飲食店や美容院のように店舗の入れ替わりが激しい業種の場合、解約して数年経つと情報が古くなってしまいます。すると、再び「Urizo」を契約して、企業リストを最新にする必要が出てきます。このように繰り返し何度も契約頂ける企業が一定数いるので、サブスクリプションの契約数は一定数以上で常に確保できていました。
毎年安定した収益がある子会社を譲渡しようと決めたのはなぜですか?
セールスサポートでは毎年安定した売上があり、利益も出ていました。ただ、グループ会社の企業として、親会社であるネオマーケティングとのシナジーを生み出すことが当初の想定通りにはできなかったことが譲渡を決めた大きな要因です。
当社は大企業のメーカーや小売店を対象にマーケティング支援をすることが多いのですが、「Urizo」は最新の企業情報を自動で集めるツールです。顧客ターゲット層の不一致もあり、グループ会社全体の経営戦略や事業ポートフォリオを見直すなかで、譲渡することを決めました。
譲渡先でさらなる成長を
今回、数あるM&A仲介会社から、どうしてインテグループを選んだのでしょうか?
実は、最初は知り合いの経営者に譲渡について相談をしました。その方は興味を持ってくれて真剣に検討してくれたのですが、最終決断まで至りませんでした。やはりM&Aは企業の事業計画や経営の状況によって決断が大きく影響してしまうので、簡単ではないんだなと痛感しました。
そこでインテグループさんに相談すると、すぐに譲渡先の候補企業をリストアップしてくれて、アプローチしてくれました。インテグループさんは、M&A業界では歴史のある企業なので、ネットワークの力がすごいんだなと実感しています。
当社にとって、企業を買収したことはあっても売却は初めてだったのですが、売却の価格も希望した金額ですぐにまとまったので、交渉は比較的スムーズに進みました。
売却がスムーズに進んだ要因はどこにあったのでしょうか?
やっぱり、担当の高村さんの能力が高かったからではないでしょうか(笑)。譲渡先のディ・ポップスグループさんは、保有しているグループ企業のどれもが成長しています。セールスサポートもその仲間に入れていただいたほうが、今後さらに成長できると感じたことが、もっとも大きかったです。
セールスサポートで働いていた社員には、売却の理由についてどのように説明されましたか?
従業員は2人いたのですが、今後の経営戦略の中で、このままネオマーケティングのグループ会社として運営し続けるよりも、提供しているサービスはディ・ポップスグループさんの傘下に入ったほうが成長できるという話をしました。従業員2人は、そのままディ・ポップスグループさんに移籍する形で、今でもセールスサポートで仕事をしています。あとは、業務委託として契約していたソフトウェアの開発者も、そのまま同じ仕事を続けています。
事業の売却で得た資金は、今後どのように活用していくお考えでしょうか?
ネオマーケティングの次の成長につなげていきたいと考えています。たとえばですが、私たちはマーケティング支援の会社なので、今後はいまの時代に即したSNSやインフルエンサーを活用したマーケティングを得意としている会社、あるいはeコマースについて質の高いノウハウを持っている会社、デジタルマーケティングの会社などとの提携を考えています。
これから事業の売却を考えている人へのメッセージをお願いします。
M&Aに関しては、さまざまな仲介会社があります。そして、世の中にはいろんなM&Aがあり、売買する企業の規模や時価総額、あるいは業種に適した仲介業者があると思います。
たとえば、大企業の資金力を存分に使ったM&Aを得意とする仲介業者に、中小企業のM&Aを依頼しても、仲介手数料が安すぎて本気で動いてくれないということはあると思います。やはり、案件に応じた適正な進め方があると思うので、それを慎重に検討されたほうがいいです。
あと、仲介手数料は惜しまないほうがいいです。M&Aの交渉中は、どうしても当事者同士だけでは解きほぐせない問題がありますので、第三者がそこに介在する意味があると思います。インテグループさんのように、担当者の人間力や機動力が高くて、依頼者に寄り添ってくれる会社は、M&Aを成功させるためには不可欠です。