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株式会社ヤマヨセンター

「会社を強固にするために…」業績好調の住宅資材問屋が会社譲渡したきっかけとは

譲渡企業譲受企業
㈱ヤマヨセンター神奈川管材㈱
山梨県神奈川県
建材卸売管材卸売
スキーム 株式譲渡

プロの工務店への資材問屋として山梨県内を中心に建築資材を提供するヤマヨセンター(本社・山梨南都留郡)。その2代目社長の米山一広氏(52歳)は、会社の事業を分割したのち、2023年1月に管工機材・住宅設備機器の総合卸販売である神奈川管材(本社・横浜市西区)に本業の建築資材販売会社の株式を譲渡しました。売上も好調で無借金経営のなか、なぜM&Aを考えたのか。決断の理由を伺いました。

 

「材木の目利き力」に強み

ヤマヨセンターという会社について教えてください。

1900年に米山木材店として創業してから先祖代々、地元・山梨県で材木店を営んできました。ヤマヨセンターになったのは1986年から。父がこの社名で創業し直して、私は2代目になります。
ヤマヨセンターは、総合住宅資材問屋として工務店さんや地場ゼネコンさんに最適な資材を納入してきました。材木のみに限らず、住宅設備機器、内装建材、プレカット、外装と断熱の施工など多品種で扱っており、お客さまからすれば、「住宅資材はヤマヨに頼めばなんでも手に入る」という信用があったと思います。

会社の強みはなんでしょうか?

多品種を扱う資材業者はほかにもありますが、われわれの強みは「材木の目利き力」です。木は“生もの”ですので、それぞれ個体差があり、職人さんの使い方に応じて、適切な材木の納品が必要になります。

職人さんが家を建てるときにはいろいろなことがあり、例えば“梁”の資材は、時間が経ったら乾燥して上に反るような木を使いたい、その他様々用途がありますが、そのような木を大工さんが「ほしい」と言ったときに、材木店発祥のヤマヨですので、大工さんのニーズを理解し資材を提供する力があります。

事業運営の苦労はどういったところにありましたか?

15年ほど前からハウスメーカーの勢いが増し、顧客である工務店さんの着工数が目減りしていきました。そのようななかで、どのように会社の売上を安定、維持させていくかは気をもみました。

私は、消費者に直接資材を売る直販店をつくったり、請負を始めたり、太陽光発電システムを設置する新規事業を始めたりしながら、当時から川下化により会社を守ってきました。

そうして事業をまわすなかで、「やりがい」はどういった点にありましたか?

私たちの資材で家を建てられた方がご近所で長らく生活をしています。だからこそ、何年経っても「いい家だ」と思っていただけるものを提供する緊張感がありました。

ご近所に住まわれている方の生活が、われわれの資材で本当に一変します。具体的には、共働きのご夫婦の家にはシステムキッチンに食洗器をつけてみたり、旦那さんが力仕事をしているのならジェットバスをつけてみたり、傷がつきづらい床材を納入してみたり。そうして何年か後に「ヤマヨさんに資材を入れてもらってよかった」と言っていただくと、生活に直結するものを販売している喜びを感じました。

会社を守る最良の答えがM&Aだった

会社の譲渡を考えたきっかけについて教えてください。

ヤマヨは7年ほど前に、岩間商事(山梨県南アルプス市)という住宅機器の販売会社を救済型M&Aで子会社化しました。ヤマヨが株主になって、いいところも悪いところも吸収してこの会社を正常稼働させた。その経験から昨今ヤマヨにも将来そのような母体が必要になると思うようになりました。

ご自身がM&Aの買い手になった経験から、今度は売り手として事業を譲渡することを意識したと?

会社の譲渡はいつか必要な作業だと思っていました。ヤマヨは今の時点では無借金で事業は順調です。多角化した事業もあるので簡単に会社が傾くこともありません。しかし、ハウスメーカーのさらなる台頭や職人不足によって、顧客数と着工数は減少を続けていくと考えられます。また社会的リスクの高い今、もし経営に難しい局面が訪れたときに、我々で持ちこたえられるのかを考えました。

経営が健全なうちはいいですが、今後そのような難局が訪れたとき、おそらく個人では到底、処理しきれないものになります。だからこそ、「ヤマヨの後継ぎは法人のほうがいいだろう」と思ったのです。ちょうど息子がパイロット試験に合格して会社を継がないことが決まったタイミングでもあり、その点も会社譲渡の後押しになりました。

いままで家族で経営してきた会社を、第3者に譲渡することに抵抗はありませんでしたか?

抵抗がまったくないと言ったらウソになります。田舎ですから、代々守ってきた会社を手放すことで、自分が周囲からどういう見方をされるのかという心配もありました。
それでもより素晴らしい経営者、より素晴らしい資本で会社が経営され会社が地域に必要とされるサービスを大いに展開できる方が、“公明正大”であろうと思うのです。

私も20年間社長として、この会社と従業員をどう守るかを、寝ても覚めても考えてきました。そのなかで、自分のメリットのために企業を譲渡するのではなく、会社をどのように守るかの最良の答えがM&Aだったということです。

先代のお父さまは、今回の決断をどう評価していますか?

会長のほうがさっぱりしていました。会長はいつも「俺が50年前に始めたことをいつまで繰り返すのだ。もっと躍進的なことはないのか。会社の形はどんどん変えていけ」と言い続けていました。だから今回のM&Aによって、ヤマヨに新たな投資が行われて会社が良くなっていくであろうと報告すると、賛同して下さっていましたね。

違う事業を持つ会社がひとつになるメリット

今回、複数社から買収の意向が示されましたが、なぜ神奈川管材を選んだのでしょうか?

まず、かなりの数の会社が購入の意思を示されていることに驚きました。
神奈川管財様を選んだ一番の決め手は、芝尾社長の人柄でした。私はこのM&Aで、まず従業員が大きな変化に耐えられるかを心配していました。その点で芝尾社長は、いきなりまったく違うことを始めるのではなく、まずはいまある強みを生かしてやっていきましょうと提案してくださった。いままでのヤマヨの活動を大切にしようと考えてくれたので、その懐の広さに魅力を感じました。

従業員にはどのタイミングで説明しましたか?

譲渡の最終契約が成立したタイミングで伝えさせていただきました。まず各店の店長から従業員に事実を伝えてもらい、その後、神奈川管材の芝尾社長と役員の方にお越しいただき、全員に口頭で説明して頂きました。従業員への説明では、「会社は何も変わらない。変わるのはオーナーと強くなった資本である」ことを丁寧に伝えまして、従業員も納得してくれました。

米山さんはすでに社長を退任しましたが、その後の神奈川管材とヤマヨセンターの連携状況をどのように見ていますか?

非常に頼もしく感じております。私は3月1日にヤマヨを退きましたが、そのときにはすでに機材の購入の話が出ていましたし、新しい社員の採用の話にもなりました。すでに昇給もあったと聞いています。3月に会社を譲渡して、4月に昇給というスピード感には驚きました。

今後、どのようなシナジーを期待しますか?

神奈川管材様は、水道管などの管材を山梨県で売りたいとおっしゃっていましたが、それはヤマヨには喜ばしい新事業だと思います。われわれは工務店さんや地場ゼネコンさんを相手にしてきましたが、管材を扱うことで今後は水道屋さんや土木屋さんなど新しいお客さまを開拓できます。それは大きなニューマーケットになるでしょうから非常に楽しみです。

そうした新事業がスピード感を持って始まることは、M&Aの大きなメリットですね。

そうです。私は岩間商事を買収した際、事業がどれだけ似ているかに固執していました。しかし事業に違う部分があって、いざ経営してみると違う事業を持つもの同士がひとつになることで、より大きなシナジーが生まれるのだと考えるようになりました。

もし仮に自分たちだけで管材販売の新規事業を始めようとしたらまず大きな投資が必要になります。労力も大変で事業に専念する従業員も数人では済まないでしょう。M&Aならお互いの知見や資産を生かしてスピーディーに新事業が立ち上がります。

インテグループの料金体系に驚き

今回のM&Aで苦労したことを教えてください。

今回のM&Aにあたって、まずは会社を分割しました。会社のメイン事業である資材販売と資産系のその他の事業を切り離しました。そして、資材販売会社を譲渡するかたちにし、残った会社は今後も私が見ていく事にしました。
この分割に当たって、どのような方法をとれば両方の経営がうまく回るようにできるか大いに悩みました。

その際、インテグループの担当者はどのように対応したのでしょうか?

インテグループの阿部さんは現場の状況を聞き取ったり調べたりして、分割案をつくってくださいました。それぞれの会社の資産と負債をどのように分けるか、積極的にご指導くださいましたね。

インテグループを選んでよかったと思いますか?

はい、分割の手間を考えると、この期間でよくまとめていただいたと思います。
私がかつて岩間商事を買収した際は、仲介会社を入れずに行いました。生意気なことを言うとM&Aの契約そのものは自分たちでもできると思っています。
しかし、絶対にできないのが相手を探すことです。阿部さんは今回、何十社にも声をかけて下さって神奈川管材様を見つけてくださいました。それは自分たちでは絶対にできないので大きな価値があります。更にインテグループさんは、契約が成立するまで報酬を頂かない完全成功報酬制ですので安心です。この料金体系はすごいと思いました。担当の阿部さんはそのほかの買収に関する疑問も、聞くとレスが簡潔で早く、とてもしっかりしていました。人柄もよく、対応に非常に満足しています。

最後に、いま会社の譲渡を検討している経営者へのメッセージをお願いします。

M&Aは「会社を強固にするために検討せざるを得ない重要案件」だと思います。経営者は、経営努力は当たり前にしていると思います。売上向上や、仕入れ原価の低減、融資を受けて会社の安全性を高めるなどです。しかしM&Aで新しい投資を呼び込み、新事業を模索する事は、ほとんどの企業ができていないはず。私はそこに面白みがあると思います。

インテグループ担当者からの一言
経営基盤の安定を実現/会社分割を活用した株式譲渡
ヤマヨセンター様は、業歴30年以上(個人事業から遡ると100年以上)に及ぶ、老舗の建材卸売会社です。
米山社長を中心とした役職員の皆さまのお力で、業績は順調に推移しておりましたが、将来を見据えて経営基盤を安定させるため、M&Aをご決断されました。
お相手は、関東を中心に急成長中の神奈川管材様で、担当の方々には終始誠実にご対応頂き、米山社長及び従業員の方々からの信頼を獲得するに至りました。
また本件は、会社分割と株式譲渡を組み合わせた手法でM&Aを実行しています。手続きが煩雑になるなか、米山社長、神奈川管材様、及び専門家の方々にご協力いただき、最後までトラブルなくM&Aを実現することができました。
コンサルティング部
マネージャー 阿部祐輝