株式会社東昇商事
事業拡大に伴う人の管理で葛藤 安心できる相手への譲渡に「後悔はまったくない」
譲渡企業 | 譲受企業 |
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㈱東昇商事 | ミアヘルサ㈱ |
東京都 | 東京都 |
保育園(6園) | 調剤薬局、保育園、介護事業 |
スキーム 株式譲渡 |
幼少期に中国から家族で日本に移住し、慶應義塾大学を卒業後、日本の大手航空会社での勤務を経て、幼児二人の子育てと、東京都近郊で「マリー保育園」(6園)の運営を両立していた林さんは、このほど、約5年間続けてきた保育園の運営会社を上場企業に譲渡しました。園児と保護者、そして保育士が安心できる「第二の家」ともいえる保育園を築き上げた経緯や事業拡大に伴う困難、M&Aを決断するに至るまでの心の移り変わりなどについて伺いました。
自身の出産がきっかけになり保育園を起業
慶應大学を卒業後、国内大手航空会社での勤務を経て保育園事業に参入されたそうですね。
大学卒業後、航空会社には総合職で入社し、本当にいろいろな業務に携わりました。私は営業系のキャリアで、入社1年目はお客様と直接お話をする予約センターで働きました。そこで接客スキルを1年半ほど磨いた後、本部の販売セールス部署に異動となり、旅行会社に卸す座席をコントロールする仕事を1年半やりました。その後、家族の出身地でもある中国の厦門(アモイ)で1年間、現地支店の法人営業で新規開拓をして、日本に戻ったタイミングで退職しました。
その航空会社の行動指針の1つである「あんしん、あったか、あかるく元気!」という言葉は、そのまま「マリー保育園」の理念にも使わせていただきました(笑)。職員にも「あんしん、あったか、あかるく元気な保育園にしましょう」と伝えていました。素晴らしい理念というのは、何をするにも、どこにいっても通用するということを実感しました。
航空会社を退職して起業した理由と保育事業に参入されたきっかけについて教えてください。
親族にはあまり会社勤めをする人がいなくて、自分で会社をやっている人がほとんどでした。「起業するなら5年以内に」ということが書かれた本を読んで、その通りだなと思い、航空会社で5年ほど勤務してから起業することを念頭に置いていました。
航空会社を退職し、最初はリサイクルショップを横須賀に構えて、ブランド品やジュエリーなど、女性が好きそうなものを買い取って再販していました。横須賀で2店目をオープンする間に、第一子を出産したのですが、自営業でしたので、認可保育園にはどこにも入れませんでした。
勤務先である横須賀の店の近くの認可外保育園に入れて、半年ほど経営を続けたのですが、体力的にも無理を感じ、小さな子供を連れて仕事ができる保育園をやろうと思い立ちました。その時リサイクルショップは3年目で、業績は悪くなかったので、知り合いに譲りました。
保育園を起業しようと思った一番のきっかけは、やはり出産です。仕事をしながら子育てをしたかったのですが、叶わなかったため、自分で保育園をやろうと思ったのです。保育園なら、自分の子供を預けながら仕事ができるのではと考えました。もし出産がなければ、リサイクルショップをもう少し続けていたと思います。業績も伸びていたし、やめる理由がなかったからです。
インターネットで調べたところ、保育園を開設するには、保育園事業に特化している設計事務所がついていないと駄目だということが分かりました。ある設計会社の社長さんに相談したところ、小規模認可保育園が不足しているということだったので、その社長さんに協力を頂き、1園目をスタートしました。
ご自身も保育士の資格をお持ちなのですね。
実は、最初は資格を持っていなかったのですが、1園目を開いて半年ぐらいして保育士資格を取ろうと思い立ちました。自分が資格を持っていないと、保育士さん達に対して説得力がないことを実感したからです。1園目開設後、1年ぐらい勉強を頑張って、保育士資格を取りました。
マリー保育園の強みを教えてください。
子供たちにとっての「第二の家」がマリー保育園のモットーです。自分も保護者の立場だったので、「こういう保育園だったら私達も安心して子供を預けられる」と思ってもらえる保育園を作ることが目標でした。そして、保護者だけではなく、保育士にとっても、安心できて、温かい気持ちになれる「第二の家」のような保育園を目指していました。それらがマリー保育園の強みです。
一番難しかったのが人の管理
保育園の運営でご苦労はありましたか?
沢山ありました。保育園というのは人がいないと成り立たない仕事です。どんなに小さな園でも、保育士は15人ぐらい必要です。急に十何人もの保育士を管理することになり、なおかつ、皆が自分よりも年上で、強く指示などできませんから、どういうふうにしたらよいのか、マネジメントに悩みました。
最初は、私の母親世代で経験も豊富な園長先生に「私は100%裏方として支えます。皆がやりたいと思う保育園をここで一緒にやっていきましょう」という形で進めてみました。初めはそれでよかったのですが、3園目、4園目を開設して、組織が大きくなると、そういうやり方は適さなくなってきてしまったので、またいろいろと葛藤しました。職員は最終的に80人ぐらいになりましたが、経営の中で本当に一番難しかったのは、人のマネジメントでした。
2017年に最初にインテグループに問い合わせしたきっかけを教えてください。
当時、運営していたのは確か3園でした。人の管理で葛藤していたころです。初めから「3園は絶対作ろう」と思っていましたが、その目標を達成したところで、少し自分の中で疲れがあって、上手な方法で事業を譲渡する方法などがないかと考えました。
インターネットで「保育園の譲渡」といったキーワードで検索したところ、インテグループがヒットしました。それで一度お話をお伺いしましたが、自分の中では、もうちょっと事業を拡大したいという気持ちもあったので、一旦は事業を継続しました。
とても早いペースで保育園の数を増やされましたね。
そうですね。全部、ご縁です(笑)。行政、設計事務所、施工会社などいろいろなところから「物件が出たのでやってみないか?」という声かけをいただきました。微力であっても、待機児童問題の解消に少しでも役に立てればとの一心で、気がつけば園数がどんどん増えていきました。
子育てと保育園運営の両立はいかがでしたか?
やはりとても大変でした。二人目の子供の出産を経て、産休育休もまったくないまま経営に励みました。また、新規開設園で起きた近隣トラブルの解消で精神的にも肉体的にも限界を感じ、危機感を抱きました。万が一自分に何かあった時に、後継者がいないこの状況で会社を持続させる方法は何かないかと考えて、改めてインテグループに相談しました。
親身な対応受けインテグループに依頼
インテルグループの完全成功報酬制をどう思いますか?
とても安心感があります。他のM&A仲介会社と比べ、インテグループの方が良いと思ったところです。やはり、結果がどうなるか分からない中で、最初に報酬が発生してしまうと、こちらも「えっ?」と思ってしまいますが、インテグループの場合、ちゃんと結果が出た後に報酬を支払うシステムなので、安心できます。特に中小企業にとっては、その方が絶対に良いと思います。
インテグループ以外のM&A仲介会社にも相談なさいましたか?
はい。他のM&A仲介会社にも相談しましたが、インテグループの方が親身になって話を聞いてくださいました。当時、私は忙しくて、いろいろ選択肢が増え過ぎると悩んでしまうので、印象の良かったインテグループに依頼すると決めました。
保育園を立ち上げた当時、将来的なM&Aによる譲渡を念頭に置いていましたか?
最初はまったくそういう考えはありませんでした。とりあえず、保育園を作って、自分の子供を見ながら、社会貢献できる仕事をしたいと思っていました。そして、3園までは頑張って開設し、その3園を守っていこうと考えていました。
どんどん事業が大きくなっていくうちに、「ちょっとこれは、自分の後任の育成のスピードが間に合わない」と思い、譲渡を考えるようになりました。いろいろな方から「後継者として旦那さんはどうですか?」とも言われました(笑)。でも、主人にも主人の仕事がありますので。
初面談で号泣、自身の苦労をミアヘルサ社が深く理解
複数の買い手候補との面談を重ねるなかで、新たな発見や心境の変化はありましたか?
インテグループの担当者の加瀬さんから何社か紹介していただき、お話を伺ううちに、自分の中の考えが具体化していきました。「こういうプロセスで、こういうことを他社は考えていて、こういうところが見られるのだな」とだんだん分かってくるようになりました。
ミアヘルサ株式会社との交渉に至った経緯を教えて下さい。
加瀬さんがかなり幅広く探してくださって、その中から私が興味を持って面談をするに至ったのが3社で、運よくその中にミアヘルサさんが入っていたのです。逆に、あまりにも交渉先が増えると、私もよく分からなくなったと思います。
複数社との交渉を経てミアヘルサ社を選んだ決め手を教えて下さい。
各社と面談してみると、「ここなら安心できる」とか「この方は立派な方だけれど、ちょっと違うな」などということが、1回目でだいたい分かりました。ミアヘルサさんを選んだ決め手は、既に数十園の認可保育園を運営されていて経験が豊富であり、理念も似ていたところです。保育園の運営とは何かをきちんと知っていて、未経験の方に譲渡するよりも安心だと感じました。
実は、ミアヘルサさんと最初に面談した時に私は号泣してしまいました。ミアヘルサさんの保育事業の責任者の方が、私が悩んできたこと、大変だったことのすべてを理解し共感してくださったからです。今までは経営者という立場上、職員の前では、もちろん泣くことなどできませんでした。やっと私の気持ちを分かってくれる方に出会い、今までの辛かったことや、苦しかった思い出などがよみがえってきたため、泣いてしまったのです。5年間必死にやってきて、初めて、私のことを分かってくれる人に出会えた気持ちでした。その1回目の面談で、この会社なら安心だと思い、ミアヘルサさんに決めました。
「まったく後悔していません」、加瀬さんが決断を後押し
インテグループの対応で特筆すべき点はありましたか?
やはり担当者の加瀬さんの人柄だと思います。本音を言いますと、ゼロから一生懸命やってきた会社を譲渡するのって、とても惜しいのです。「本当にこれでいいのかな。確かにこの状況はつらいけれど、諦めずに後継者を育てて、もう1回やってみよう」と考えることをせずに、譲渡の方が安心だと思えたのは、やはり加瀬さんのおかげです。「ああ、確かに譲渡する方が、自分に合っているのかな」と思わせてくれました。加瀬さんは上から目線ではなく、親身に対応してくれました。
今考えると、インテグループだからこそ、譲渡を決断してもいいかなと思ったのかもしれません。もし、ちょっと合わないM&A仲介会社だったら、譲渡していなかった可能性もあります。業績も伸びていて、「なぜ譲渡する必要があるの?頑張ればもっと大きくできるよ」「今、認可保育園が必要だから、拡大していけばいいじゃない」と言う方も結構多かったので。
そんな中、「後継者がいない状況を打破するにはM&A」という決断をさせてくれたのがインテグループでした。橋渡しをしてくださったインテグループには本当に感謝しています。そして、ミアヘルサさんが今、上場企業らしい整ったスキームでマリー保育園を運営してくださっているので、譲渡したことはまったく後悔していません。何より、私個人の力では10年はかかるであろう経営構造の問題を、M&Aにより一気に解決できました。
担当者の加瀬氏の対応についてもう少し聞かせてください
2回目の相談から、ずっと加瀬さんに対応してもらいましたが、年齢も近く、とてもお話しやすかったです。こちらの規模が小さく、逆にミアヘルサさんは大きい会社なので、「お願いしたいことが通らないのではないか、無理を言ってくるのではないか」と心配していたのですけれど、加瀬さんはこちらの立場で、交渉事をミアヘルサさんに持って行ってくださり、すごく安心しました。
そしてミアヘルサさんも、本当に、とても親切で、無理なことも言われませんでした。私がお願いしたいことを100パーセント聞いてくださいました。最初の面談で泣いてしまったからですかね(笑)。
M&Aによる譲渡で重視した点はありますか?
安心感です。中国で幼稚園を運営していて、日本の保育園のシステムにとても興味があって、高い金額を提示してくださった方もいたのです。でも、ミアヘルサさんのように既に保育園の知識としっかりした経営ノウハウを持つ会社に譲れるのだったら、ちょっと安くてもいいかな、と思いました。
もしミアヘルサさんではなく、実績のないところに譲渡していたら、私は今ももっと忙しくしていると思います。保育園の事業はそれほど簡単なものではありませんから。
譲渡から1年が経ちましたが、どのようなライフスタイルを送っていますか?
半年ほど、ゆっくり休みました。自分には、人を雇用せずにある程度の収入を得る事業にシフトしたいという目標がずっとあったので、新しく設立した会社で不動産を運用し、家賃収入が入るようにしています。
じっくり相手を探すためには、完全成功報酬制が最適
M&Aを選択肢の一つに考えている経営者へのメッセージはありますか?
私もM&Aを実行するまでに相当悩みました。自分で一生懸命、ゼロから会社を立ち上げた方は、会社への思い入れが半端ではありません。その会社を譲渡するというのは、とても勇気がいると思います。ちゃんとした相手にめぐり合えなかったら、自分の子供のように育てた会社が、駄目になってしまうじゃありませんか。
会社を自分の子供に例えると、M&Aは次の親を誰にするかという話です。そこは、やはり里親を探すつもりで、M&A仲介会社とよく話をして、自分がピンとくるところが見つかるまで、焦らずじっくり選んでほしいと思います。その意味で、インテグループの完全成功報酬型は、とても適していると思います。
会って、時間をかけてお話して、「ここだったらいいな」というところが見つかってから決めるのが良いと思います。M&Aは大変複雑なので、インテグループのような信頼できる仲介会社を挟んでお話をするというのが、絶対的条件だと思います。
女性起業家の増加に期待、「悔い残らぬよう挑戦して」
起業を検討する方へのアドバイスはありますか?
確率論で考え、リスクを恐れて起業できない人がほとんどです。航空会社の同期や、いろいろな知り合いもそうですが、優秀であればあるほど、起業して成功するのは難しいと思っている人が多いと思います。
私は、確率論よりも、やはり一生に一度の人生だから、自分が悔いのないよう、挑戦してもらいたいと思います。若い方々には、どんどん起業とか、そういった挑戦を、特に女の子にやってほしいと思っています。日本では、やはりまだ女性が会社を起こすとか、そういう意識は低いのかなと思いますが、中国では皆さんやっています。男性は、結婚すると家を守らなければならないという責任が強くなってしまうので、起業というと構えてしまいますが、逆に「子供がいるからやってみよう」という主婦の方が増えるといいなと思っています。
女性だからこそ、本当はもうちょっと気軽に起業ができるということをもっと伝えたいですね。リスクはありますが、たった一度の人生だから、女性の皆さんには、「これをやっておけばよかった」というような悔いがないようにしてもらいたいですね。
今後、何か違う事業を始める予定はありますか?
まだ子供に手がかかるので、今は考えていません。将来的には、発達障害の子供を支援する教室をやってみたいと思っています。保育士資格を持っていますし、発達障害のお子さんが増えているということなので、挑戦してみたいと思っていますが、まだコロナ禍も落ち着いていないので、しばらくしてからですね。