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M&Aの現場(BLOG)

事業承継の本質

家業で経営に携わっていた頃、何度か事業承継セミナーというものに参加したことがある。講師は税理士の先生や中小企業診断士の先生だったが、基本的な話は相続税対策に終始していた。つまり、いかに持ち株の評価額を下げるかという話だった。
少し進歩的なセミナーでは、相続税対策より資本政策を強調していた。つまり、相続対策の結果散逸してしまった株式を、いかに後継者に集中させるかという話だった。

しかし、相続税を安く抑え、株を後継者に集中させることが、本当に、事業承継対策なのだろうか?

事業承継とは、文字通り事業を次の世代に受け継いでいくことである。それは税金を安くしたり、親族間で株式を奪い合ったりすることではないはずだ。

将来に渡り事業を継続していくことを考えた時、最も重要となるのは、誰を後継者とするべきか、ということだ。相続税対策も資本政策も、この“どの後継者が最適か”という視点が抜け落ちている点で、事業承継対策としては不十分である。

私自身が中小企業経営者の長男だからこそ良く分かるのだが、中小企業の創業者は類まれなる能力と事業に対する情熱がある一方で、その子息が同じものを有しているとは限らない。少なくとも、事業に対する熱意・意欲が、創業者を上回ることはないだろう。
相続税対策を必死で行い、株を長男に集中させたとしても、その長男に経営能力、または、意欲がなければ、その会社が将来に渡って継続することはありえない。

事業承継とは、端的に言えば、その事業を将来に渡って運営する能力・意欲がある後継者に引き渡すことである。そして、その後継者が親族である場合もあれば、それ以外の従業員、上場企業、または、ファンドである場合もあるだろう。

能力が高く意欲が強い社員に、MBOの形で事業を譲渡する。
組織力に優れる大企業に会社を譲渡し、経営の安定化を目指す。
優秀な経営者人材・資金力を有するファンドの元で、更なる成長・上場を目指す。

事業承継の本質を見つめ直せば、M&Aがその有力な選択肢となるはずだ。

籠谷

19/Aug.2007 [Sun] 14:17

会社譲渡:選択肢としての投資ファンド

村上ファンド、スティールパートナーズの影響だろうか、ファンドは悪者というネガティブなイメージが一般的に定着している感がある。

中小企業の社長様と話をしていても、“ファンドに会社を売るのはちょっと”、というリアクションが返ってくることが多い。

ファンドといっても、アクティビストファンド、PEファンド、ヘッジファンド、VCといろいろあって、それぞれ異なる戦略と行動軸を持っている。
しかも、各カテゴリー内でも、得意分野、投資期間、カルチャーなどは、個々のファンドによって様々である。
このようなファンドの違いが正確に理解されないまま、一部の過激なファンドとひとくくりに悪者扱いされては、他のファンドは不本意に違いない。

弊社は、業務上いろいろなファンドとお付き合いさせて頂いている。
弊社の付き合いのあるファンドの多くは、金にものを言わせて会社・従業員を蹂躙するようなことはせず、従業員との対話を重ねることで、その会社で看過されていた秘められた価値を見つけ出し顕在化させるということに注力しているように感じる。
また、ファンドで働いている方々も、誠実で人間味のある人が多い。

ファンドは、むやみに恐れ嫌悪する対象ではなく、正しく理解しうまく付き合えば、会社の譲渡先として有力な選択肢の一つに成りうる存在だ、と思っている。

籠谷

15/Aug.2007 [Wed] 14:14

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