売り手にとってのデューデリジェンス
現在、私が担当している案件のうち2案件で、デューデリジェンスが同時進行している。
売り手の社長様は、デューデリジェンスを受けることは当然初めてなので、いろいろ不安となるようだ。
デューデリジェンスの日が近づいてくると、どんなことを問いただされるのか不安になり、
よく電話がかかってくるようになる。
デューデリジェンスでは、調査実施者の質問に対し、知っている限りにおいて誠実に回答してもらうだけで良い。警察の取調べではないので、ネチネチと尋問されたり、恫喝されたりすることはない。
また、財務的な数字に疎いことを心配される経営者もいらっしゃるが、即答できない財務的な質問については、別途経理担当者や顧問税理士に問い合わせて、後日回答すれば良いだけである。
また、デューデリジェンスを実施する会計事務所・弁護士事務所が提出してきた依頼資料のリストを見て、自社に存在しない資料の多さに萎縮してしまう社長もいらっしゃる。これも、存在しない資料を長時間かけて作成する必要はない。別の資料で代替できるケースが大半であるし、それがなければインタビューにおいて口頭で回答すれば良いのである。
弊社がM&A仲介するケースでは、デューデリジェンスよりも前の段階で、かなり詳細な資料を提出しており、個別質問事項にも明確に回答して頂いているので、デューデリジェンスは円滑に進むケースがほとんどである。
籠谷智輝
12/Aug.2008 [Tue] 19:12
経営者の心遣い
弊社は、完全に成功報酬のみでM&A仲介サービスを提供している。
そのため、着手金、中間金(基本合意に至った時点で成功報酬の20%を支払う等)、月間リテナーフィー等は一切頂いておらず、M&Aが成立した場合にのみ、成功報酬を頂いている。
また、M&A仲介サービスの過程で発生する交通費等も、新幹線代や飛行機代等の金額が大きいものを除き、ほとんどの場合、弊社の自己負担となっている。
現在取扱中のある案件では、最寄駅からタクシーを使う必要があり、タクシー代も弊社負担となっている。
弊社としては、当然の出費なのだが、売り手の社長様はそれを気にされているようで、毎回訪問の度に、帰りは駅まで送って下さる。
最初は、お忙しいだろうからと辞退しようとしていたのだが、駅の方に用事があるからなど、何かしらの理由をつけて、送って下さる。
駅までの車内の15分間は、仕事を離れて、いろいろなお話をでき、社長様の素晴らしい人間性に触れる楽しいひと時となっている。
この社長の会社は、経営者の実直な人柄を反映して、素晴らしい経営成績を残されている。数社の買い手様が興味を示しており、良いM&A仲介ができる確信している。
最後に送って頂く車中で、笑顔でお話ができるように、成約までしっかりとM&A仲介サポートをさせて頂くつもりだ。
籠谷智輝
11/Aug.2008 [Mon] 19:07
ポストM&A
先日、弊社が1年弱サポートさせて頂いた会社様のM&Aが成立した。
この会社様については、ご依頼を頂いてから2ヶ月程で、買い手候補は、ある程度固まっていたのだが、買い手様の諸般の事情により、実際の成約まで時間を要した。
本件では、ご依頼から10ヶ月後の成約ということになる。
業種にもよるが、M&Aは3ヶ月~6ヶ月程度で成立するのが一般的であるから、少し時間がかかった案件と言えるだろう。売主様にはいろいろご不安もあったであろうが、忍耐強く待って頂き、その間も緊張感を切らさず、好業績を継続された。
また、買い手の会社様も、無理に引き伸ばして条件交渉をされるようなことはなさらず、逆に、細かい点には拘泥せず、売り手様の事業上の本質に目を向けて頂くという、非常に器の大きい対応をして頂いた。
本件は、売り手と買い手の、事業上のシナジー効果も大きく、企業文化も近いところがあるので、非常にいいマッチングになったのではないかと思う。売り手の社長様は、今後も会社の代表として残り、大企業である買い手様のグループ企業として、ますます業績を伸ばしていかれることと思う。
案件成立後、売主の社長様より、“今後も、いい報告ができるように頑張ります”というメールを頂いた。
弊社は、M&Aが成立するまでしかお手伝いできないが、自ら手がけた案件については、やはり、その後もずっと応援する気持ちが強い。
素晴らしい決断をされた社長様のこれからの活躍を心より祈念している。
籠谷智輝
31/Jul.2008 [Thu] 19:05
M&Aと人間力
最近、遅ればせながら、D・カーネギーの“人を動かす”を読んだ。
人間力を高める至言が詰め込まれた素晴らしい本だった。
M&Aアドバイザーとしての仕事柄、日々、経営者の方々とお話させて頂く。
その度に痛感するのが、経営者の方々の器の大きさ・人格の素晴らしさと、私自身の人間としての未熟さである。
若輩者の私が、自己を人生・ビジネスマン・起業家の大先輩と比較すること自体がおこがましいが、自身の人間として成長の必要性を痛感して、焦燥する日々である。
D・カーネギーの“人を動かす”には、品格ある人間として、そうあるべき原理原則が書かれている。
そして、それらの多くは、私が日々お付き合いしている経営者の方々の立ち振る舞いに見て取れるものばかりだ。
成功した経営者は、自然と、人としての原理原則に従った行動をとるのだろう。
本を読んだからといって簡単に成長できる訳ではないのだが、少しでも素晴らしい経営者の先輩方に近づけるように、この本の一文一文を何度も噛締めたいと思う。
籠谷智輝
18/Jul.2008 [Fri] 19:03
M&Aと選択と集中
会社・事業の売却理由の一つに、ノンコア事業の売却とコア事業への集中がある。
ノンコアの事業を売却し、そこで得た資金をコア事業に投入するという話である。
このような相談には、例えば以下のようなパターンがある。
①ノンコア事業が赤字で、その負担に耐え切れなくなった
②ノンコアも将来のコアとして育成してきたが、伸びが鈍化、又は黒字化の目処が立たない
③ノンコア事業は堅調だが、コア事業が予想以上に伸びており、当該事業に一層の経営資源の投入が求められている
この中で、もっとも売却しやすいのは、言うまでもなく③のケースである。
ただ、③のケースであっても、タイミングを逃すと①②に転落する危険はある。コア事業への投資のために、ノンコア事業への資金的・人的投資が抑制された結果、ノンコア事業の業績が低下を始めるケースは、決して少なくない。
現状で利益が出ている事業を手放す意思決定は容易ではないだろうが、適切なタイミングで選択と集中に踏み切ることは、企業の成長過程において必要不可欠な経営判断であると思う。
籠谷智輝
09/Jul.2008 [Wed] 18:47