M&A仲介とFAの違い
M&A仲介とは
M&A仲介とは、1社のアドバイザーが売り手と買い手の間に立ち、中立的な立場からM&Aの成立を支援する業務をいいます。M&A仲介会社は、売り手か買い手の一方の利益だけを優先するのではなく、双方の利益に配慮し、公平かつ友好的に交渉や手続き進めるという役割を担います。
FAとは
FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、売り手か買い手どちらか一方のサイドに立ち、その依頼主の利益最大化を目的としてM&Aの手続きを支援する業務をいいます。売り手と買い手にそれぞれ別のFA会社が付き、双方のFA会社が自らの依頼主の利益を少しでも大きくするために、場合によっては敵対的な進め方も辞さずに交渉や手続きを進めるという役割を担います。
M&A仲介会社とFA会社の違い
■対象とする案件規模の違い
日本においては、中小企業のM&A等の中小規模案件についてはM&A仲介会社が、大企業の子会社売却やクロスボーダーM&A等の大規模案件についてはFA会社が、それぞれ担当するケースが多くなっています。
このように、案件規模によってM&A仲介会社とFA会社の住み分けが起きるのは、そもそもFA会社は手数料が少額の中小規模M&A案件をサービス対象外としているという業界構造に起因しています。FA会社によっても異なりますが、一般的に、FA会社は譲渡金額が数十億以上の案件をターゲットにしていると言われています。
■料金体系の違い
M&A仲介会社の料金体系は、主に、着手金、中間金、及び成功報酬で構成されています。着手金とは、依頼時に発生する費用で、多くの仲介会社では100万円から300万円程度の設定になっています。また、中間金とは、M&Aが基本合意のフェーズまで進んだ場合に発生する費用で、成功報酬の10%~20%の設定となっています。着手金と中間金は、たとえM&Aが成立しない場合でも、返却されません。なお、当社のように、着手金、中間金のない完全成功報酬制のM&A仲介会社も少ないながら存在します。
一方、FA会社の料金体系は、月額報酬(リテナーフィー)と成功報酬で構成されています。月額報酬とは、月次定額のコンサルティング料であり、M&Aの成否にかかわらず発生し、M&Aのプロセスが長引けば長引くほど、より多額のコストが発生する仕組みになっています。
大企業のM&Aと比べると相対的に成約確度が低い中小企業のM&Aにおいて、M&Aの成否とは関係なく発生し、成約までの期間が長くなれば長くなるほど費用負担が増えるリテナーフィーという報酬体系は、顧客である中小企業オーナー社長の納得感が得られず、中小企業のM&AにおいてFA会社が敬遠される理由の一つになっています。
■求めれられる情報及び専門性による違い
大型のM&A案件、特にクロスボーダーの案件では、M&Aスキーム、法的観点、税務的観点等、考慮すべきテクニカルな事項が膨大となり、その支援には高い専門性が要求されます。一方、中小企業のM&Aにおいては、法律・税務面は国内に限定され、またスキームも株式譲渡か事業譲渡というシンプルなケースが多いため、テクニカル面での支援よりも、適切な買い手候補とのマッチングの重要性が高くなります。したがって、M&A仲介会社は、有力な買い手候補の情報をいかに多く蓄積しているかが重要になります。
また、中小企業のM&Aにおいては、オーナー経営者の個人的感情に関わる問題、連帯保証の問題、役員退職慰労金を活用したスキーム、役員生命保険の問題、公私混同(私用車・自宅の社宅化等)の問題、未払残業代の問題等、大規模M&Aには見られない中小企業特有の論点が存在するため、中小企業のM&Aに特化してノウハウと経験を蓄積してきたM&A仲介会社の方が、中小企業M&Aに関する専門性という観点から、より適切な助言が可能となるという側面もあります。
このように、中小規模M&Aと大規模M&Aにおいて、必要とされる情報や専門性が異なるということが、中小企業のM&AにおいてM&A仲介会社が選ばれる理由の一つになっています。
M&A仲介会社の利益相反問題
M&A仲介会社は、構造的に利害が対立する売り手と買い手の双方から手数料を受領する立場にあることから、利益相反ではないかという批判を受けることがあります。しかし、M&A仲介契約においては、会社を売却するという判断も、会社を買収するという意思決定も、それぞれ売り手と買い手に完全に委ねられており、M&A仲介会社がそれを強制したり、圧力をかけたりすることは契約上できません。M&A仲介会社は、あくまで売り手と買い手の交渉が円滑に進むように公平な立場で進行を支援する立場にあり、どちらか一方の有利になるように情報を隠蔽したり、手続きを操作したりことは、自社に対する訴訟リスクを高めるだけで、何のメリットもありません。したがって、仲介会社というだけで、M&A仲介会社が利益相反を起こしているという主張は、極めて表層的な批判だと考えます。例えば、類似業種である不動産仲介業界では、戦後50年以上に渡り不動産売買や賃貸について仲介サービスを提供しています。
とはいえ、利害が対立する売り手と買い手の双方から手数料を受領するというM&A仲介の構造上、利益相反があるのではないかという疑念が生じるのは避けられず、また、M&A仲介会社が負っている社会的責任を考慮すると、利益相反についての利用者の不安を払拭していく必要があることは間違いありません。
この利益相反の問題については、中小企業庁より「中小M&Aガイドライン」が公表されています。当該ガイドラインでは、利益相反のリスクを回避するために、M&A仲介とFAとの違いを顧客に説明すること、自社の立ち場が仲介であることを明示すること、M&A仲介には利益相反のリスクが存在する旨を顧客に説明すること、他の専門家のセカンド・オピニオンを許容すること等が定められています。当社は、中小M&Aガイドラインを遵守しており、当該ガイドラインに沿った業務手順を整備するとともに、コンサルタントに対して当該ガイドラインの研修会を定期的に実施しています。
FAでは利益相反は起きないのか
利益相反の問題について、FA会社では、売り手か買い手のどちらか一方のみを支援するため、利益相反が起きないという主張がなされることがあります。しかし、仲介会社であれ、FA会社であれ、手数料に占める成功報酬の割合が大きいビジネスは、本質的に利益相反のリスクが内在しています。
例えば、売り手サイドのFAの場合、買い手から提示された金額が過少であったとしても、成功報酬が貰えなくなるためM&Aの辞退を助言しにくいという利益相反があります。また、買い手サイドのFAの場合、買収金額が過大であればあるほど、買い手から貰える手数料が大きくなるという利益相反があります。したがって、M&A仲介会社だから利益相反があり、FA会社だから利益相反がないという単純な問題ではなく、M&Aのプロフェッショナルとして自社の利益ではなく顧客の利益を尊重して適切な助言を行うという信念と、それを担保するための社内体制(経営理念、社内ルール、業務手順、社員教育)の有無が重要となります。
M&A仲介会社の選び方
M&A仲介会社を選ぶ際には、「取り扱う案件の規模」「強み」「報酬体系」「候補企業へのアプローチ方法」等の要素を考慮して、慎重に検討する必要があります。詳しくは、M&Aコラム「M&A仲介会社の選び方」をご参照ください。
M&Aとは
M&A仲介会社についてより広範にお知りになりたい方は、当社が作成した「M&Aの完全成功マニュアル」において、M&Aとは何かについて、中小企業の経営者が知っておくべき事項を網羅的に取りまとめておりますので、併せてご参照ください。M&Aの完全成功マニュアルの内容は以下のとおりです。
1.中小企業にとってのM&Aとは
2.M&Aの手法
3.M&Aにおける売却価額と評価方法
4.M&Aでかかる税金
5.M&Aにおける売却可能性について
6.売却しやすい会社・事業とは
7.M&Aの手数料
8.M&Aのメリット
9.M&Aの流れ
10.M&Aで必要となる契約書
11.M&A成功のポイント
12.M&Aを誰に相談すべきか
13.M&Aを考える前の準備
14. M&Aにおける売却理由・買収目的とは
15.譲渡に際してのリスク
16.従業員への譲渡
17.ファンドへの譲渡
M&A無料相談・お問い合わせ
27/Jul.2021 [Tue] 16:43