優秀な企業内M&A担当者の要件③
優秀な企業内M&A担当者の要件の第三の要件です。
(第一の要件については、こちらをご覧ください)
(第二の要件については、こちらをご覧ください)
③売り手社長への敬意を持っている
買い手の方が上だという誤った認識をしている担当者が稀にいらっしゃいます。
確かに、一般的には、買い手の方が売り手よりも会社規模は大きいでしょう。
しかし、売り手の社長は、小さいながらエムアンドエー(MアンドA)の対象となるようなしっかりとした会社を経営してきた方です。
会社の規模や上場しているかどうかは関係なく、相応の敬意を示すのがビジネスマンとして当然だと思います。
なにより、担当者の敬意の無さは、表面上いくら取り繕っていても、面談や交渉の中で滲み出し、売り手社長に伝わってしまいます。
それは、特に、トップ面談時の質問の仕方に現れます。
粗探しのような質問を、ずけずけと、しかも、担当者本人は失礼であるという自覚なくしてしまい、売り手社長の不興を買うのです。
もちろん、M&Aを実行する前に、リスクや疑問点は徹底的に調査・解消すべきですが、売り手社長に対する尊敬の念があれば、質問の仕方も、柔らかく、好意的なものになるはずです。
質問が粗探しのように響くのは、担当者の心底に「買ってやるんだ」という上から目線があるからです。
中小企業のM&Aにおいては、売り手社長は金額だけで相手を選びません。
面談時の印象が悪ければ、いくら良い条件を提示しても、断られてしまいます。
トップ面談の後に、売り手再度から、断りが入るのはよくある話です。
結局、売り手の社長への敬意がなければ良い買収機会を逸してしまうのです。
私の経験上、優秀なM&A担当者は、対象会社のビジネスや社長の考え方を、まず褒めます。
そして、ポジティブな文脈の中に、きわどい質問をうまく織り交ぜて、聞きくべきことをうまく引き出します。
また、トップ面談時には、かならず社長か役員クラスの上席者を連れてきます。
これも、規模は小さいとはいえ一国一城の主である売り手社長への敬意の表れです。
会計・法律の知識がある人物よりも、売り手社長に敬意を払える担当者の方が、M&Aの担当者としてはよほど優秀だと思います。
籠谷智輝
02/Apr.2013 [Tue] 12:12