中小企業のエムアンドエー(MアンドA)マーケットの変遷
本日、面談をしたある買い手企業の社長から、「最近、新手のM&A仲介会社が増えてきましたね。」というコメントを頂きました。
たしかに、最近、聞いたことがないような同業退社のHPを目にしたり、社名を耳にする機会が増えています。
業界でのプレイヤーが増えることで競争は厳しくなりますが、その分業界全体の知名度や多様性が高まるため、業界内の他のプレイヤーにとってもメリットはあると思っています。
一方で、M&A仲介会社の大量出現は過去に何度も起こっており、そのたびにほとんどの会社が淘汰されるというサイクルが繰り返えされているのも事実です。
歴史を振り返れば、1990年以前は、日本のエムアンドエーといえば大企業が中心で、アドバイザーの仕事も大手証券会社や銀行の独壇場でした。
その中でも、山一証券のM&Aアドバイザリー部門は営業力が強く、かなりの案件獲得数を誇っていました。
この山一証券のM&A部門から飛び出したOBが、多くの独立系のM&Aアドバイザリー会社を創業しており、M&Aアドバイザリー業界の裾野拡大に貢献しました。独立系M&Aアドバイザリーファームの最大手で、M&A情報提供サービスも手掛けるレコフも山一OBの創業です。
ただ、証券会社OBによる独立系のファームも、比較的大規模な案件を中心に業務を行っており、いわゆる中小企業のエムアンドエー(MアンドA)はこの時代はまだ一般的ではありませんでした。
その後、1991年に中小企業のM&A仲介をする目的で、現在M&A仲介会社で唯一の上場企業である日本M&Aセンターが設立されました。
この日本M&Aセンターを筆頭に、1990年代に中小企業のM&A仲介を専業とする会社がいくつか生まれ、中小企業のエムアンドエー(MアンドA)マーケットが形成されていきました。
とはいえ、1990年代は、中小企業の経営者にエムアンドエー(MアンドA)が浸透しておらず、またバブル崩壊の影響もあり、中小企業のエムアンドエー(MアンドA)市場は2000年代初頭まで、それほど拡大しませんでした。
現在、M&A仲介会社の最大手として売上高72億円を誇る日本M&Aセンターも、創業から11年が経過した2002年時点の売上高は4億円に過ぎませんでした。
1990年代のM&A仲介マーケットの草創期に設立された会社で、現在も第一線で活躍している会社は、日本M&Aセンターを含む数社に過ぎず、多くが消滅しています。
このように1990年代から2000年代初頭まで、徐々に形成されてきた中小企業のエムアンドエー(MアンドA)マーケットですが、2002年以降は状況が激変します。
2002年から2008年まで続いた戦後最長の景気拡大期間である「いざなみ景気」の影響もあり、国内では空前のM&Aブームが到来したのです。
大型のM&A案件も活発でしたが、中小企業の事業承継の解決策としてM&Aの認知度が高まり、中小企業のM&A件数もうなぎ上りに増加しました。
さらに、2006年には日本M&Aセンターが東証マザーズに上場し、2007年には中小企業のM&A仲介業界は加熱のピークを迎えます。
この爆発的に市場が拡大した2004年~2008年の間に、雨後の竹の子のごとくM&A仲介会社が乱立しました。
完全に独立系の会社に加え、コンサルティング会社や会計事務所が一事業部として新規参入するケースなど、毎週数社は新会社が出てくるような状況でした。
このように急拡大し、活況を呈した中小企業のエムアンドエー(MアンドA)マーケットですが、2008年のサブプライム、2009年のリーマンショックをきっかけに、急速に冷え込みます。
市場の縮小に合せて、中小のM&A仲介会社が次々と廃業していきました。
特に、M&A専業でないコンサルティング会社や会計事務所は事業部を閉鎖するか開店休業状態になっているところが多くありました。
ちなみに、弊社インテグループもこの時期(2007年)の創業です。
同業が乱立し競争は確かに激しかったのですが、当時は珍しかった完全成功報酬制がお客様から評価され、独自のポジションを確立できたことで、無事生き残ることができました。
弊社と同時期に創業した会社で今も活躍している会社を見てみると、「M&A専業」、「独自性」、「信念」という3つの特徴があります。
流行っているからと本業の傍らで副業的に手を出した会社、独自の売りや事業モデルがない会社、M&Aについて何の思い入れもなく儲かりそうという理由だけで参入した会社は、目立った結果を残せずに知らぬ間にいなくなっていました。
その後、リーマンショックの影響が薄れ始めた2011年以降は、中小企業のM&Aマーケットも復調しており、冒頭の社長がおっしゃたとおり、新規参入がまた活発化してきています。
ただ、これまでの何度も繰り返されたように、しっかりとしたビジネスモデルと事業理念がない多くの会社が消え去り、数社のしっかりとしたプレイヤーだけが市場に残ることでしょう。
日本では2012年より団塊の世代が65歳を超え始め、この世代の経営者の事業承継問題は今後ますます深刻化していきます。
M&Aはこの事業承継問題解決の有力な選択肢の一つであり、今後少なくとも5年間は中小企業のエムアンドエー(MアンドA)マーケットは拡大するとみられています。
そして、市場の拡大に伴い、新規参入や新サービスが次々と現れ、過去20数年がそうだったように、次々と退場していくでしょう。
2007年の創業当時はエムアンドエー(MアンドA)マーケットの新参者だった弊社ですが、設立7年目の今は、相応の実績と認知度を有するマーケットの構成員の1社になれたのではないかと思っています。
その自負と責任感を持って、今後も繰り返されるであろう市場の選別に淘汰されないように、しっかりとしたサービスを提供し続けたいと思います。
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04/Jun.2013 [Tue] 13:22